2017年3月20日月曜日

3月12日(日)取り残されている建物こそ、街の財産

 休日。
 有希の所属する舞台の制作集団「シアター・デザイン・カンパニー」が、多度津で街歩き(フィールドワーク)をするというので、ぼくも愛犬のつぶと一緒に参加。
 まずは、「赤いはりねずみ」という名前のレストランでランチ。ちょうどお昼の混んでいる時間帯だったので、おしゃべりしながらのんびり待つ。ドイツ料理の店らしいけど、どこがドイツなのかイマイチ解からず。「洋食」という方がしっくりくる。
 おなかいっぱいで、すでに動く気力が失せかけていたが、とりあえず歩く。腹ごなし。
 前を通るたび気になっていた洋館は、現役の病院。
 



 玄関横にはヘラジカのオブジェ。愛嬌のある顔をしている。


 多度津には「多度津工業高校」という高校があったのだけど(現・多度津高校)、ぼくと有希はそこの卒業生。8歳違うので学内で会うことはなかったけど、ふたりとも同じ音楽部だった。かつて、ぼくが音楽を作るために使っていたパソコンは、そのまま部室の片隅で埃をかぶっていたらしい。(高校生の時に、音楽部顧問の先生がぼくにパソコンを用意してくれなかったら、ぼくは音楽制作ができるようになっていなかったはず。時代はちょうどDTM黎明期。楽器の演奏ができなくても、プログラムさえ打ち込めば音楽が作れた。YMOからこっち、ようやく一般人にも手が届くようになっていた。)
 卒業した数年後に1度だけ再訪したことがあるが、それからゆうに20年は足を運んでいない。まさか今回、街歩きの途中で、パートナーと愛犬を伴って再訪することになろうとは。
 感慨無量。


 ただし。日曜日なので、校舎は閉鎖中。グランドでは、野球部が練習試合をしている。それを脇目に、敷地内をぐるりと散策する。幾つかの校舎が新設されている以外は、すべて昔のままだ。音楽部の部室も、同じ場所のまま変わっていなかった。
 「懐かしい…」
 ふたりの、不思議な縁を想う。


 JR多度津駅を経由して、旧こんぴら街道に入る。
 昨年8月にできたばかりの雑貨店「tetugakuya」へ。ヨーロッパの古いアンティークを中心に、雑貨やリトグラフなどを扱うお店。
 一歩足を踏み入れたところで、球体関節人形作家のヒロミちゃんに偶然遭遇。「やあやあ!」
 店内にある古い足踏みオルガンを弾かせてもらったり、おしゃべりをしたり。
 近々、ちょっとしたカフェスペースもできるそうだ。街の文化的なサロンとして機能したらいいな。


 名残を惜しみつつ、街歩き再開。


 高校在学中ですら来たことのなかったエリアを、そぞろ歩く。 
 かつては商店が両脇に軒を連ね、賑やかな通りだったのだろう。造り酒屋や旅館と見られる建物、果ては銭湯に至るまで残されていた。もちろん、今はどこも営業してない。
 寂れていく古い街は、そのうち新しい建物に侵食される。更地になったと思ったら、後には景観にそぐわないぺらぺらの建物が建つ。そうして、街の歴史や伝統は歯抜けになってしまう。そういう街からは、魅力もどんどん殺がれていく。『新しければいい』のは、その建物に暮らす人だけだ。
 「景観」という曖昧模糊とした要因に、どう行政が介入するかは大きな課題だけど、古ければ古いほど大事にしてほしいと思う。一度壊したが最後、長い時間の集積で醸し出されている魅力はもう二度と取り戻せないのだから。


 街おこしで有名なある先駆者が、その講演で云っていた。「何んにも手付かずでまるまる取り残されている街こそが、街おこしの最先端なのだ」と。多度津はまさに、そういう街だ。


 夜ごはんはおうちで。久々のキムチ鍋。うまし。

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